出産後5か月で開業!空の木犬猫病院 高橋 聡美院長

動物病院開業獣医師
空の木犬猫病院 高橋 聡美 院長


●プロフィール
・2003年 麻布大学 獣医学部獣医学科卒業

・2003~2012年開業獣医師のもとで勤務医および
日本小動物がんセンター研修医

※カナダ語学留学、コーネル大学腫瘍科短期研修(visiting program)含む
・2012年5月 長女出産

 

 

●獣医師になろうと思ったきっかけを教えてください

子供のころから馬が好きで最初は馬に関連した仕事をしたいなと思っていたのがきっかけです。乗馬クラブにも兄妹でかよっていて、兄も馬が好きでインストラクターを経て装蹄師になり、私は周りに獣医師はいない事から獣医師になろうと思いました。

●開業しようと思った経緯を教えてください

30歳ぐらいの勤務医をしていた頃、今後のビジョンが見えず、結婚のこと、子供ができた時のこと、年をとってからのこと、色々なことが何だかとても不安でした。

このままでいいのか、この先何をしたいのか、毎日自問自答していたような気がします。そうしているうちに、大きい病院の慌ただしくこなすような診療より、小さい病院でゆっくりと飼い主さんの話を聞けるような診療をしたいなという気持ちが芽生えてきたんです。ただ、その時は開業する事は費用の面なども含めてすごく大変な事だろうし、自分には到底できない夢のような話だと思っていました。その頃、勤務先の院長に今後の事を尋ねられたことがあって、小さくて飼い主さんとゆっくり向き合える病院をやってみたいという気持ちを話しました。もちろん、ただの夢として。そうしたら「そのような感じの病院ならできるんじゃないか。もし開業するなら力を貸すよ」と言ってくれたんです。え?まさか!と本当にビックリしました。

ちょうどその時に、祖父が遺してくれた場所のすぐそばに東京スカイツリーが建設されることが決定し、勝手に運命めいたものを感じてそこに開業することを決めました。

開業を決意した時にはまだ結婚の予定もなかったのですが、そこからほんの数年の間に、思わず結婚のご縁と妊娠をしました。出産を控えているので開業は時期を伸ばしたほうがいいのではと考え、また同じ院長に相談したところ、「子育てはいつになっても落ち着かないから、待たないで開業したほうがいいよ」という、またしてもまさかのアドバイスだったんです。そんな言葉に再び背中を押してもらい、娘が誕生して生後5ヵ月の時に開業をすることになりました。

●仕事と育児を両立するなかでどんな事があり、どんな工夫をしましたか

正直、あんまりなくて(笑)もともと産後すぐ始めた病院なので、自然と周囲が助けてくれるスタイルになったと思います。夫は獣医師ではなく会社員ですが、家事も育児もお互いカバーし合っています。サポートしてくれるみんなは「チーム」のようで、育児にも孤独を感じず、みんなとたくさんの感情を共有できるのは、両立の良さかもしれません。

開業そのものは本当に大変で、一人だったらすごく心細かったと思います。

開業してから保育園に入るまでの数か月は、病院で授乳したり、おんぶしたりしながら診療をしたことも。背中で子どもがギャン泣きする中、採血したり留置針を入れたりしたこともあります。でもその時はちゃんと集中できるんですよ(笑)

もうすぐ娘も病院も5歳です。毎日楽しいと思えたのは娘がいたからだし、娘が背中を見ているから診療に対してより一層誠実な気持ちになれました。本当に感謝しています。

大変だなと思ったのは娘の胃腸風邪がうつった時。さすがに休診にしましたが、この時もみんなが助けてくれました。そういう点では会社などに勤めている人よりも自分で調整がきく分、楽かもしれません。飼い主さんにとっては、小さな子どもがいることで距離が縮まったり、安心していただけるという一面もあるのかなと思います。以前は結婚や出産に対して、マイナスなイメージが強かったのですが、現実はそんなことはありませんでした。

 

 

 

 

 

●この病院で取り組んでいる「緩和ケア」について教えてください

空の木犬猫病院は最期のその時まで、お家で出来る限り自然な形で過ごしてもらえるようサポートをする緩和ケアに重点を置いています。

根治治療を目指す高度医療センターは多くあるけど、治りませんという病気の動物を積極的に診てあげる病院は少ないと思いますし、苦手な先生も多いのではないでしょうか。

以前、研修をしていた日本小動物がんセンターでも根治治療の動物と緩和ケアの動物の来院が入り混じったような状況でした。緩和ケアならば、高度医療センターのような特別な施設もいらないし、もっと町の近い病院のほうが通院しやすいだろうと考えたんです。

根治治療をするのか、緩和ケアをするのかを見極めることはとても重要な事ですが、私は小動物がんセンターなどで学んだ経験から色々な医療を提案できると思いますし、飼い主さんと話をすることが好きなので緩和ケアのような分野は得意なのだと思います。

「治さない」という緩和ケアには、悲しみやマイナスなイメージがあるかもしれませんが、「治さない」を受け入れることで、残された時間を通院や治療に費やすのではなく、楽しい時間をすごすために使うことができます。私は病気なんだけど

まだ元気な時間を「健康時間」と呼んでいるのですが、健康時間には、大好きなオヤツをうんと食べさせてあげたり、好きなことをして、今まで我慢させていたことを思う存分してほしいと思っています。

これがたくさんできると飼い主さんは後悔せず、満足して見送れることが多いんです。

お別れは悲しいことですが、緩和ケアの最後には飼い主さんには自然に泣いてもらえるといいな、といつも思っています。

●働く女性達へメッセージを!

結婚も出産も育児も両立も、私が抱いていた
イメージとは違って、とても楽しくて素敵なことでした。
これは声を大にして言いたいです。
開業は男性も女性も大変な事だと思います。
経営と医療の両方の側面をもっていますから。
壁に当たった時、言い訳を探して諦めることは
一番簡単です。「女だから」「子どもがいるから」と。
頑張らなくていいわけだから。その言葉は周囲の人に
言われる時も同じで、そこを理由に諦めてもらえると手っ取り早いのだと私は思っています。そうではなく、「女性だから」「自分の個性だから」こそ有利になることを探していけばいいんじゃないでしょうか。男性より女性を好む飼い主さんやペットは多いですしね。私も身長が人よりも小さく新人の頃はよく看護師さんに間違えられたりしたこともありますが、今はそれが飼い主さんや動物に好かれる武器になっているような気がします。小動物の世界は馬の世界などよりも男女平等社会ですし。私は産後すぐ開業しましたが、出産や育児でブランクができたとしてもコミュニケーションスキルなどが高い人は戻ってきやすい業界だと思います。また、育児という小さな話せない命に向き合う経験は、内面のスキルアップや飼い主さんの不安への理解にもつながるし、犬や猫の気持ちがわかるようにもなる。だって乳幼児のやることは犬猫たちそっくりですから(笑)。私だけでなく自分の個性を生かす働き方はだれでもできるはずですよ。自分らしいカタチを新しく作ればいいんです。

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