動物病院の働き方 「獣医暗黒時代からの脱出」~スタッフが快適に働ける場所が最良の動物病院~

竹原獣医科医院 院長
川崎市獣医師会 会長
竹原 秀行 先生

 

●まさに獣医師の「暗黒時代」

私が大学を卒業した頃の代診時代はどこも、丁稚奉公で修業のような働き方がほとんどでした。住み込みで365日休みなしが当たり前というような感じです。今のように動物看護師さんという職業もなかった時代なので、給料4万~5万/月で、新人は雑用で診療業務には携われないような状態でした。掃除や犬の散歩、院長の車の洗車、子供の幼稚園の送り迎えのような仕事までこなさないといけません。一年ぐらい経つと、技術を見て盗んで覚え、やっと注射を一本させてもらえるというような時代。まさに「獣医暗黒時代」です。代診の未来に展望なんかありませんでした。

スキルをアップさせようとしても、そのような専門のセミナーがあるわけでもないし、獣医療機器もなく、人間の医療とはかなり差がある時代でした。血液検査の生化学検査機器もなく、その後、外注の検査がようやく人の紹介でできるようになったのを覚えています。

●展望がないと思っていた「動物病院」をなぜ始めたか

獣医療には未来にあまり展望が持てないと思っていたので、大学を卒業してからは動物病院とは関係がない企業の営業を数か月していました。その後、その仕事は合わず、すぐ辞めました。その頃に個人旅行でアメリカに行く機会がありました。その旅行で動物病院を見学させてもらう機会があったのですが、アメリカでは獣医師の待遇はとてもよく、家も大きいですし、車も高級車でかなり豊かな生活をしているようで日本では夢のような現実がそこにはありました。それを見てからは「日本でも、そのうちそうなるかもしれない」という展望を感じることができたので、日本に帰ったら真面目に動物病院をしてみようと思ったんです。その時代を体験してきた先生方は、海外の獣医療とか人の医療からの影響を受けて獣医療を開拓してきた人たちが多いと思います。

●人に恵まれると経営が軌道にのる

アメリカから帰った後、もし、自分が院長になったら、今までの「獣医暗黒時代」の動物病院とは違う動物病院をつくりたい。きちんとスタッフに給料をだせるような病院にしようと思っていました。開業当初は知識も技術もないので苦労しましたが、少しづつ知識が増えていくうちに、税理士さんや獣医師さんなどのスタッフに恵まれて動物病院が軌道に乗っていくようになりました。最初に当院に勤務した獣医師さんは自分より給料が高かったぐらいです。動物看護師さんのお給料もなるべく高くしようと心掛けました。
そうしていくうちに、病院はどんどん軌道に乗り、人数も増えて規模も大きくなっていったんです。

●代診獣医師さんへの持論

獣医師はまじめに10年も経験すると、一通りの診療はできるので、代診時代には、飼い主さんへの接客や経営を学ぶことが大事だと当医院の代診には言っています。学術は独立してからでも学ぶ機会はたくさんあると思います。
獣医療はサービス業なので、獣医師さんも看護師さんも顧客満足度が一番大事だと考えています。

●スタッフが作っていく勤務形態

定休日なしの週休二日のシフト制について、病院のスタッフに提案したことがあるのですが、反対を受けました。シフト制だと曜日などによって忙しさが違って不公平が生じたりすることがあるからだと思います。なので、スタッフの意見を聞き入れ、土曜日は半日、日曜祝日は休みということを続けています。また、定時に終わることを目標としていますので、繁忙期を除いて残業はほとんどないと思います。

今はもっと勤務時間を短くできないかなと考えています。北海道の分院では9時~17時の女性スタッフだけでの診療ができているので可能だと思っています。理想は周辺の病院と協力しあって、勤務時間を短くしていきたいです。同じ時間帯で同じ診療内容で働いている病院が多数あるのはで効率が悪いと考えています。今では獣医師も女性が増えてきており、家庭を持ちながら仕事を続ける女性スタッフはどんどん増えていくと思うので、みんなで助け合って、働きやすい環境をつくっていかなくてはいけないと思っています。

当医院では保育園に送り迎えをされるお母さんスタッフが多いので、様々な勤務形態で働いている女性が多いです。午前中だけの出勤や午後からの出勤するなど、日によって変えてもらうこともできます。いっそのこと、動物病院に託児所を作ってしまおうかと考えたこともあるんですよ(笑)。

当医院のモットー

獣医師や看護師が楽しく快適に働ける環境であれば、どうぶつたちも安心して治療を受けられる環境である、と思っています。私の役目はスタッフに充実した仕事ができる施設や医療器、福利厚生などの環境を提供することです。それがどうぶつたちへのクオリティの高い獣医療の提供につながると思います。

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